「アドベントの祈り」友納靖史牧師(2018/12/02)
キリスト・イエスの誕生(降誕日)を待ち望む4週間を、アドベント(待降)と呼びます。教会にとって、一年の中で最も喜びと期待に満ち溢れる季節です。クリスマスが教会の祝日(12月25日・当時の冬至祭の日)と定められたのは、ローマ皇帝コンスタンティヌス一世がキリスト教を公認した西暦AD313年の直後からでした。それまで初代教会が大切にしていた日とは、肉体の誕生ではなく、主がバプテスマを受けられた日(東方教会の公現祭1月6日)とされていたからです。
今年、選定したクリスマスの聖書個所はパウロが獄中で著したフィリピ人への手紙より分かち合います。2章6節以下には、主イエスが人となって地上に誕生されたことを喜び感謝する「キリスト賛歌」の前にある1章で、フィリピ教会とされた一人一人の中に、救い主が誕生したことを喜ぶ言葉が記されました。「あなたがたが最初の日から今日まで、福音にあずかっている(1:5)」とある『最初の日』とは、イエスを信じ受け入れ、バプテスマを受けた日です。更に「あなたがたの中で善い業を始められた方(1:6)」とあり、即ち新生したキリスト者<「キリスト・イエスに結ばれているすべての聖なる者たち(1:1)」>の中にイエスが誕生され、共に歩み始められたことに目が注がれました。これこそが、マタイ1章23節(イザヤ7:14)で証しされる「インマヌエル:神は我々と共におられる」です。ここでは神の御子イエスがキリスト者の側にいるイメージよりも、キリスト者の<ただ中>に誕生され共におられると自覚する信仰をパウロは告白したのです。
パウロのアドベントの祈りとは、初臨(イエス誕生)ではなく再臨、即ち再び主イエスが来られる日までに、キリスト者一人一人のいのちに始められた『善い業』即ち、イエスの十字架と復活による永遠のいのちの完成を待ち望む祈りでした。主イエスとお会いする(再臨の時)までの地上の生涯において、神に喜ばれる者へと主にあってつくり変えられることを信じたパウロは「アドベントの祈り」としてこう祈ります。「知る力と見抜く力とを身に着けて、あなたがたの愛がますます豊かになり、本当に重要なことを見分けられるように…(1:9-11)」。
教会にとって本当に重要なアドベントとは、世界中の人々がイエスを主と信じ救われることを待ち望み、また主に託されたそれぞれの良き業の完成を待ち望みつつ、祈り、共に仕える喜びを体験することです。神の栄光と誉れとを讃えるクリスマスを迎える準備を致しましょう。