「 イエスの語る旧約の福音(15)『明日に向かって』」友納靖史牧師(2019/06/16)
[聖書]歴代誌下20章13~22節、マルコによる福音書14章22~26節
「歴代誌」は旧約中、祭司の視点から記されたイスラエルの歴史書です。ソロモン王の死後、ヨシャファトは南ユダ王国第四代の王として、分裂した北イスラエルとの関係改善と和解を成し、公平と平和の王として歩んでいました。しかしアンモン人とモアブ人の連合軍がユダに侵入し、国中より幼子から家族全てが一カ所に集められ、断食し、何よりも「主を求めて」祈り続けます。ある日、主の霊を注がれたヤハジエルを通し、主が語られました。「この大軍を前にしても恐れるな。おじけるな。これはあなたたちの戦いではなく、神の戦いである。明日<敵>に向かって攻め下れ。…そのときあなたたちが戦う必要はない。堅く立って、主があなたたちを救うのを見よ。…人々よ、恐れるな。おじけるな。明日<敵>に向かって出て行け。主が共にいる(下20:15-17)」。この励ましを受けた王は、地にひれ伏し、全ての民と礼拝します。共に礼拝を奉げる中、かつてモーセの言葉(出エジ14:13・14)にも似た神の励ましを受けた王と民はどれだけ勇気を与えられたことでしょう。この礼拝を受けたレビ人のケハトとコラの子孫たちが立ち上がり、大声を張り上げ、神なる主を賛美したのです。
この礼拝体験を通して王は翌日こう語ります。「聞け。あなたたちの神、主に信頼せよ。そうすればあなたたちは確かに生かされる。…勝利を得ることができる」。これを受け王と民は協議を重ねて、主に向かって歌を歌い、軍隊の先頭に立ち主の聖なる輝きをたたえる者(聖歌隊)が、敵を迎え打ちます。そこで歌われた「主に感謝せよ、その慈しみはとこしえに(歴下20:21)」の讃美は、追い迫るエジプト軍から葦の海で救われた奇跡の後、モーセとイスラエルの民により賛美された「海の歌」(出エジ15:1-18)や「大ハレルヤ」(詩編136)に基づいていました。国家と人生の危機が、主への讃美によって神の民を守ったのです。
主イエスが過越し (出エジプトの奇跡を忘れないため)の食事の最中、イエスを殺す策略が背後で進んでいました。そのことをご存知であった主イエスは、「賛美の祈り」を唱えて、犠牲となるご自分の体の象徴としてパンを裂き、感謝の祈りを唱えながら杯を弟子たちに分かち合われたのです。そして、弟子の裏切りと十字架の苦難とを覚悟しつつオリーブ山へ出かける時、主と弟子たちがしたこと。それは「賛美の歌を歌う(神に全てを委ねる)」ことでした(マル14:26)。主イエスは救いの完成を遂げる戦いを前に「神への賛美」によって勝利を信じて向かわれたのです。
私たちも今、それぞれの人生の明日に向かう時、大きな戦いが待ち受けています。その時、人生の戦いは私たちではなく、「神が戦ってくださる」ことを信じ、主への賛美を共に捧げ、恐れを乗り越え歩み続けて参りましょう。